研究概要 |
1.血液以外の体液中におけるTTV DNAの検出とウイルス様粒子の観察 血液以外の体液中におけるTTVの存在を確認するために、血中TTV DNA陽性の男性10例を対象にして、唾液、精液中における同ウイルスの検出を試みた。その結果、唾液では7/10(70%)、精液では6/10(60%)と高率にTTV DNAが検出された。また胆嚢摘出術を受けた16例の患者から得られた胆汁を用いて同様の検索を行った結果、TTV DNAが8/16(50%)に検出された。さらに塩化セシウム密度勾配にて各フラクションに分画し、PCR法にてTTV DNAを検出したところ、1.24-1.28g/mlの領域で陽性を示した。次いでこの陽性フラクションをプールし濃縮後電顕検索を行った結果、直径20-30nmからなるウイルス様粒子が観察された。 2.Simian-TTV(s-TTV)のヒト感染 s-TTV特異的なプライマーを作製し、PCR法によるs-TTV DNA測定系を確立した。この方法を用いて、本邦における健康成人血清200例および肝疾患患者血清260例を対象として、スクリーニングにかけた。その結果、健常成人でのs-TTV陽性率は、3/200(1.5%)であったのに対し、肝疾患群では18/260(6.9%)と高値を示した。疾患別における感染率は、慢性肝炎10/217(4.6%)、肝硬変4/28(14.2%)、肝癌4/12(33.3%)であった。10/18(55.5%)がHBVおよびHCVの重複感染を伴わない単独感染であった。成因不明の肝疾患では、10/151(6.6%)にs-TTVが検出された。さらに、PCR陽性産物の塩基配列を決定した結果、チンパンジー由来のs-TTVプロトタイプ(CH65-1)と85%以上の相同性を示した。また分子系統樹解析においては、ヒト由来s-TTVはサル由来s-TTVと同一集簇を形成したが、TTVとは明らかに区画された。ヒトおよびサル由来s-TTVの集団は,二つの異なるゲノタイプに分類された。
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