SMP30遺伝子破壊マウス系を確立した。現在8代までのC57BL/6マウス系に退交配し純系として確立した。SMP30遺伝子破壊マウスは通常の方法で飼育する限り野生型マウスとは著しい差は認められなかった。生後約1年では腎臓に巨大な嚢胞を発症する例が多数認められた。電子顕微鏡による観察では肝臓においては細胞質に多数の脂肪滴が観察された。またミトコンドリアの変性も野生型マウスに比して増強していた。ライソゾームも著明であった。野生型に比較して遺伝子破壊マウスではリボソームの発達が乏しいことが特徴的であった。これらの所見は加齢に伴う肝所見と極めて類似しており遺伝子破壊により臓器の加齢変化が促進されることがわかった。初代培養肝細胞を用いてTNFαによるアポトーシスの誘導を解析した。TNFαとactinomycin Dを併用し培養肝細胞を処理するとSMP30遺伝子破壊マウスはアポトーシスに対する感受性が亢進する事が明らかとなった。このTNFα誘導性アポトーシスにおいては細胞内で2つの経路が活性化されるがカスパーゼの活性化を主とするpro-apoptotic pathwayには差が無く、NFkBの活性化を主とするanti-apoptotic pathwayも通常に活性化され差がなかった。従ってSMP30の抗アポトーシス抑制作用はSMP30によるカルシウムポンプ亢進によると現時点では結論している。SMP30の発現部位の解析を進めておりさらに多くの臓器で発現しており、血液系を除く殆ど全ての臓器に発現している。この事実は加齢変化の多臓器発現を説明するものである。
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