1)SMP30遺伝子破壊マウス系における臓器病変を観察した。顎下腺においてはミトコンドリアの変性が高度であった。ミトコンドリア特異的なcytochrome oxidaseの活性も遺伝子破壊マウスにおいて減少していた。分泌顆粒の著明な減少も認められた。SMP30の欠損により細胞質内からミトコンドリアへのカルシウムが移行する際に必要なCa^<2+>-ATPaseが活性化されないことが原因と考えられる。α-isoproterenolの投与すると正常マウスの顎下腺顆粒管では粗面小胞体の増加と拡張がみられ、顆粒は小型になり増加している。このような現象はSMP30遺伝子破壊マウスでは認められなかった。 2)SMP30遺伝子破壊マウスの肝臓において脂肪沈着が野生型に比較して著明であった。この脂質成分を薄層クロマトグラフィーで解析したところ中性脂肪の量的差異はなくSMP30遺伝子欠損マウスではリン脂質が著明に増加していた。特にミトコンドリア膜成分であるカルジオリピンが増加していた。ミトコンドリア機能不全に対応する病態と考えられた。 3)加齢に伴うSMP30の発現減少は加齢に伴う酸化ストレス増加による可能性を明らかにした。モデル動物に典型的な酸化ストレスである四塩化炭素を投与すると初期には肝臓においてアルブミンの発現は変化が無いのに対してSMP30は著明な減少を示した。SMP30の加齢による減少は酸化ストレスが原因であることが示唆された。 4)今年度の研究は加齢に伴い酸化ストレスが上昇しSMP30が減少し、細胞内カルシウムの恒常性が維持できなくなることが加齢により出現する病態の要因となっていることを明らかにした。
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