研究概要 |
生殖系列の癌化機構の解明を目標にして、生殖幹細胞である精原細胞に特異的に発現する遺伝子を単離するために、精原細胞で分化が停止しているJSDマウス特異的に発現する遺伝子群の解析をおこなった。JSDとW/Wv変異マウス精巣から調製したmRNAを用いてcDNAマイクロアレイ解析とRDA法によりJSD精巣でのみ強く発現しているprostaglandin D_2 synthetaseや24p3などのリポカリン群、肺癌細胞株で遺伝子変異が報告されているProtein tyrosin phosphatase-TD14やB型肝炎ウイルスX抗原癌遺伝子により発現抑制されるSuiなどの癌抑制遺伝子などを含め、既知遺伝子20個と機能未知遺伝子4個を単離した。さらに、これらの遺伝子の発現について詳細に調べたところ1)JSDマウス特異的遺伝子群はすべて、精原細胞で分化が停止しているCryptorchid精巣でも発現していた。2)それらは正常マウスでは胎生13.5日のゴナドから成獣の精巣まで発現していた。3)12週令精巣切片を用いたIn situ hybridizationでは解析したすべての遺伝子が精細管の基底部にある細胞群で発現が観られた。4)embryonic carcinoma cell line F9,P19での発現を16種類の遺伝子についてRT-PCRにより調べたところ、5種類の遺伝子では発現は認められなかった。 以上の結果から、生殖系幹細胞である精原細胞特異的に発現している24個の遺伝子を単離することができた。また、これらの遺伝子の中には2種類のembryonic carcinoma cell lineで発現が観られない癌抑制遺伝子候補も存在した。
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