研究概要 |
1)擬充尾虫は、宿主-マウス-のマクロファージからのTNF-α,inducibleNOSなどのサイトカイン遺伝子の発現を抑制することが判明しているので、TNF-α遺伝子の発現抑制機序を明らかにするための研究を行った。その結果、擬充尾虫の培養上清(ES産物)は、マクロファージの内因性抑制因子であるprostaglandin E2,SLPI, IL-10を介する抑制ではなく、そしてC3H/HeNとC3H/HeJ(Toll-llike receptor4のミュータント系)マウスとの比較においてTNF-αは抑制し、IL-1αは抑制されないことからToll-like Receptor4以下のシグナル伝達系の抑制によることが推測された。そこでTNF-αのシグナル伝達系における重要な役割を担うNF-kB活性をgel shift assayを用いてご検討したが抑制は観察されなかった。次にMAPKカスケードにおけるERK1/2活性、P38MAPK活性をその抑制剤(PD98059,SB203580)を用いてその活性をWestern blot分析にて検討したところ擬充尾虫のES産物は、これらの活性を抑制していることが判明した。よって、ES産物は、LPS活性化マクロファージにおけるMAPKカスケードを制御することによりTNF-αmRNAの発現を抑制し、その産生を低下させていることが判明した。 2)ES産物はLPS活性化マクロファージにおいてIL-1αは抑制しないがL-1βは抑制した。この相違がどのような機序によるものかをLPS活性化RAW264.7macrophageを用いて検討した。その結果、IIL-1βはcAMP依存性にMAPKカスケードのリン酸化により活性化されるが、ES産物は、TNF-αと同様にERK1/2およびp38MAPKのリン酸化を抑制することによりcAMP依存性lL-1βのmRNA発現を抑制することが示唆された。
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