研究概要 |
1.マンソン裂頭条虫擬充尾虫の排泄・分泌産物(ES)はLPS活性化マクロファージのTNF-α遺伝子発現と産生を抑制することが判明した。その抑制機序はNF-κB経路の抑制ではなく、ERK1/2とp38MAPKのリン酸化を抑制することによってMAPK経路を抑制することでTNF-αを抑制していることが示唆された。 2.LPS刺激マクロファージのIL-1β遣伝子の発現にもMAPK経路が関与していることからマンソン裂頭条虫擬充尾虫のESはIL-1βの遺伝子発現にも関与することが推測された。ERK1/2およびp38MAPKの阻害剤を用いて観察した結果、ESはMAPK経路を抑制することでIL-1βの遺伝子発現も抑制することが示唆された。 3.LPS刺激マクロファージのシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の遺伝子発現にもMAPK経路が関与していることが知られているのでESのそれへの影響を観察した。ESはTNF-α,IL-1βと同様にMAPK経路を抑制することによってCOX-2の遺伝子発現を抑制した。また、アクチノマイシン-Dを用いた実験で遺伝子の転写後の不安定性も関与していることが推測された。 4.熱帯熱マラリア原虫の培養上清はヒト単球細胞THP-1のTNF-α,IL-1βおよびICAM-1の遺伝子発現を誘導した。これらの遺伝子発現に及ぼすESの影響を観察したところ、ESはTHP-1細胞のTNF-αおよびIL-1βの遺伝子発現を抑制したが、ICAM-1遺伝子の発現を抑制しなかった。この抑制機序はMAPK経路の抑制により惹起されていることが推測された。 このようにESはマクロファージ系の細胞のMAPK経路を抑制することによって種々のサイトカインの遺伝子発現を抑制することが示唆されたので、今後リウマチ様関節炎において機能する破骨細胞形成へのESの作用について研究する。
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