マラリア原虫の赤血球への侵入型であるメロゾイトの先端部には侵入に重要な役割を果たすと考えられている小器官が局在している。その中で最も大型の小器官であるロプトリーに含まれる蛋白(140kDaおよび100kDa)の機能解析を、ジーンターゲッティングの手法を用いて解析することを目的として本研究を開始した。遺伝子の破壊を試みたネズミマラリア原虫Plasmodium yoeliiにおいては、遺伝子導入方法が確立していないため、近縁種のP. bergheiで確立されている方法を基に、1)実験に使用するマウス体内における原虫のピリメサミン感受性の確認、および、2)ピリメサミン耐性遺伝子の遺伝子導入による薬剤耐性能の獲得の確認とピリメサミンの有効濃度の確認などの予備実験を行った。その結果、P. bergheiで行われている方法に改良を加えることで、P. yoeliiでも遺伝子導入が可能であることが示唆された。そこで100kDaまたは140kDaロプトリー蛋白の遺伝子座破壊ベクターを構築するために、PCR法によりP. yoeliiから100kDaまたは140kDaロプトリー蛋白をコードする遺伝子断片を増幅し、ピリメサミン耐性遺伝子を運ぶベクターpMD204に組み込んだ。次に、直鎖状にしたこれらのロプトリー蛋白の遺伝子座破壊ベクターをP. yoeliiに電気穿孔法により遺伝子導入し、ピリメサミンの選択圧の下で培養して、ロプトリー蛋白遺伝子座が破壊された原虫の選択を試みた。現在までのところロプトリー蛋白遺伝子座破壊クローンの樹立には至っていないため、遺伝子破壊ベクターの改良を行い、ロプトリー蛋白遺伝子座破壊マラリア原虫の作成を継続して実施している。
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