研究概要 |
ネズミ糞線虫第3期幼虫はラットに経皮感染し、頭蓋内に侵入する。しかし本幼虫がどのようにして宿主を見出し、いかにして頭部を見出するのか全く分からない。幼虫頭部にはアンフイッド(感覚器)が一対存在する。幼虫はIn vitroでNaイオンに誘因される。さらにIn vitroで各種哺乳動物の血清に対してもchemotaxisを示す。血清の中のどの物質が幼虫を誘引するかを検索した。透析膜を用いて血清を分離した結果幼虫は蛋白質に誘引された。そこで透析血清をCentrico〓10Kdaで分離した結果幼虫はretentateには強く誘引され、filtrateにはほとんど引かれなかった。血清成分の中で大きな蛋白成分はアルブミン、グロブリンである。市販のラット血清アルブミン、牛血清アルブミン、卵白アルブミン、乳アルブミンを用い、幼虫のアッセイを行った。その結果ラットアルブミン、牛アルブミン、卵アルブミンに幼虫は誘引された。乳アルブミン、各種グロブリンは水に不溶のためアッセイ出来なかった。Peptidesについては透析後のpeptone,triptone,tryptoseに幼虫は誘引された。しかしglutathionには全く引かれなかった。 さらに幼虫を各種酵素、レクチンで処理し、一時的にアンフイッドの機能を停止した幼虫をNaCl勾配のあるアガロース平板上に置き、Naイオンに対する化学走性阻止効果を見た。その結果,Hyaluronidase,Tripsin,Protease,Con∧等に行動阻止現象が見られた。よってIn vivoの試験として35S-methioneでラベルした幼虫を前記のHyaluronidase,Tripsin、Con∧で処理を行って、ラットに投与した。感染15,20,25時間後に全身オートラヂオグラフィ法を用いてラット体内の幼虫移行動向を見た。その結果Hyaluronidase処理群はcontrol群に比べて、体内移行速度が早く感じられた。Con∧処理群(1.0mg/ml)は顕微鏡下ではかなりのダメージを認めたが、実際ラットに投与して見ると、その移動速度は早く、無処置群との間に差異を認めなかった。
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