研究概要 |
線虫をげっ歯類に感染させると感染10〜14日後、小腸において粘膜型マスト細胞の急激な増加が認められる。in vitroで生体内マスト細胞と同様な期間で分化・増殖が認められるマスト細胞増殖因子を調べた。マウス骨髄細胞(1×10^7)を11日間IL-3とSCF(+S BMMC)又はSCF,IL-9,TGE-β1(+SIT BMMC)を加え培養すると1×10^8、97%以上のマスト細胞が得られた。 この培養系を使用し、マスト細胞のE-カドヘリン、αE(CD103),β7インテグリン、粘膜型マスト細胞にdominantなマスト細胞プロテアーゼMMCP-1、マスト細胞のマーカーとしてc-kitレセプター、FcεRIの発現をRT-PCR,免疫組織化学,FACS等により解析した。 RT-PCRで+SIT BMMCは+S BMMCと比較してE-カドヘリン、β7インテグリン、c-kitレセプター、FcεRI、MMCP-1のmRNA発現が有為に増加していること、CD103は+SIT BMMCで発現が認められたが、+S BMMCでは検出されなかった。 この2群のマスト細胞のMMCP-1を抗MMCP-1抗体を用いた免疫組織化学で陽性マスト細胞の割合を算出した結果、+SIT BMMCで97±1%、+S BMMCでは20%以下であった。 FACSによりE-カドヘリン、CD103を解析した結果RT-PCRと同じくE-カドヘリンは2群で発現が認められ、CD103は+SIT BMMCで発現が認められたが+S BMMCでは認められなかった。 以上の結果からマスト細胞はその前駆細胞から分化・成熟する過程で増殖因子により発現する接着分子・マスト細胞プロテアーゼが異なること、骨髄細胞に増殖因子としてSCF,IL-9,TGF-β1を添加し得られたマスト細胞は粘膜型マスト細胞により近い性質を持つことが示唆された。
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