研究概要 |
線虫感染に伴い小腸粘膜で増加するマスト細胞は旋毛虫や糞線虫などの排除や感染防御に深く関わっており、即時型アレルギーの病態形成や炎症・免疫反応においても重要な役割を演じている。 本研究は小腸粘膜上皮内マスト細胞(粘膜型マスト細胞:MMC)のin vitroモデルとして骨髄細胞を増殖因子(IL-3+IL-4)で培養したマスト細胞(BMMC)を使用し、種々の接着分子発現と機能を解析した。結果は上皮系細胞に発現する接着分子E-カドヘリンとその細胞内結合蛋白であるα-,β-,p120-カテニンが発現していた。マスト細胞に発現するE-カドヘリンはマスト細胞前駆細胞からマスト細胞への分化・増殖過程に関与し、E-カドヘリンを介した接着能を有していることが抗体および合成ペプチドを用いた実験により明らかになった。近年、粘膜型マスト細胞に発現するプロテアーゼ(mMCP-1)が旋毛虫の排除に関与することが報告され、骨髄細胞に増殖因子としてIL-3,SCF, IL-9,TGF-β1を加え短期間(2週間)培養するとMMCにより近いプロテアーゼの発現パターン(mMCP-1陽性)を示すマスト細胞が得られる。そこで、MMCにより近い性状を有する上記増殖因子添加培養マスト細胞を用い、種々の接着分子発現をmRNA,蛋白レベルで解析した。培養粘膜型マスト細胞にはE-カドヘリンおよびそのヘテロリガンドであるインテグリンαEβ7が同時に発現しているユニークな特徴が認められた。粘膜型マスト細胞は小腸粘膜上皮細胞間に存在し上皮細胞はE-カドヘリンを発現することから、粘膜型マスト細胞は上皮細胞とE-カドヘリンおよびインテグリンαEβ7 2つの分子を介し接着し局在することが示唆された。
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