本研究では回虫に見い出された新規シトクロムb5の生合成機構、局在を明らかにし、低酸素圧適応における生理機能を解明することを目的としている。平成13年度は、1)回虫体壁シトクロムb5を含む電子伝達系成分の精製と再構成を行い、その生理機能を明らかにする、2)シトクロムb5の寄生適応における生理的意義を明らかにする一環として自活性線虫Caenorhabditis elegansのホモローグを同定する、の2項目を計画した。以下、項目別に得られた知見について述べる。1)回虫筋シトクロムb5を含む電子伝達系成分の精製と再構成a)回虫体壁組織の細胞分画を行い、いかなる分画に本シトクロムb5を還元する活性(シトクロムb5還元酵素活性)が局在するのか検討したところ、本活性は細胞質分画にはほとんど検出されず、顆粒分画に回収された。また、体腔液にはわずかながら本活性が検出されたので、現在精製を試みている。前年度でシトクロムb5が体腔液にも存在することが示唆されていたが、ヘムを有しないアポ蛋白である可能性もあるため、体腔液から本シトクロムを精製した結果、ヘムを結合したホロ蛋白で、N-末端のアミノ酸配列も体壁由来のものと同一であった。b)シトクロムb5還元酵素も含め、シトクロムb5と結合する成分を検索する目的で、大腸菌で大量発現させたrecombinantシトクロムb5をligandとするaffinity columnを作製し、体壁ホモジェネートの超遠心上清を吸着させ、塩で溶出した。その結果、100mM NaClで溶出される成分が見い出され、現在解析中である。2)C. elegansのホモローグ、とくに回虫にはみられないミクロゾーム型シトクロムb5の有無を検索した結果、4種のホモローグが遺伝子情報から見い出された。実際に本線虫の細胞分画を抗シトクロムb5抗体を用いてImmunoblottingを行ったところ、ミトコンドリア分画に交差反応をしめすバンドがみられたが、細胞質分画には見られなかった。
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