WHOにより推進されているリンパ系フィラリア症のelimination計画に不可欠な流行地の発見のための診断法として、尿を用いた診断法を確立・標準化することが本研究の第一の目的である。 (1)尿ELISA法の確立 フィラリア症の場合、抗原特異的なIgG4抗体を検出することにより特異性を高めることができるが、尿中にこの抗体を検出することが可能であり、通常のELISA法で検出することができることを明かとした。また各プレートに陽性コントロールを置くことにより、抗原吸着プレートの品質管理ならびに検体中の抗体量の定量ならびに検体間の比較を可能とした。タイ、ラオスのバンクロフト糸状虫症の非流行地より得られた尿検体よりcut off値を決定し、バンクロフト糸状虫症91検体を調べたところ、87検体(96%)が陽性と判定された。またバンクロフト糸状虫症非流行地よりの298検体中、295検体(99%)が陰性と判定され、この方法が感度、特異性共にすぐれていることがわかった。 (2)乳幼児からの尿の採取法の検討 流行地において乳幼児の抗体保有状況の調査は、感染動態の把握に重要な情報を提供するが、乳幼児からの採血は親から同意を得ることが困難であり、また倫理な問題もある。その点尿の採取は非侵襲的であり、ほとんど苦痛を与えないという利点があるため、採取のための技術的な問題さえ解決すれば極めて有用な検体となる。乳幼児用の採尿バッグを用いたところ、容易に採取できることがわかった。現在採取した検体の抗体を測定中である。 (3)リコンビナント抗原の検討 上記尿ELISAにリコンビナント抗原を導入するための予備実験として、SXP1抗原について検討した。Raoらが報告したバンクロフト糸状虫にのみ存在し高い特異性が期待できるN末の25アミノ酸について、overlapped peptideを作成し、患者血清を用いて検討したが、現在までのところ反応する部位は見つかっていない。さらに他の部位ならびに他のリコンビナント抗原についても検討している。
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