WHOにより推進されているリンパ系フィラリア症のelimination計画に不可欠な流行地の発見、対策の効果判定のための、尿を用いた診断法の確立・標準化が本研究の第一の目的である。 (1)尿ELISA法の確立 尿の採取・運搬・保存・測定の各方法を標準化することが出来た。リコンビナント抗原の作製は継続中である。 (2)尿ELISA法の、流行地の発見のための大規模調査への適用(スリランカのグループとの共同研究) リンパ系フィラリア症のelimination計画に不可欠な大規模な疫学調査にこの尿ELISAを使う場合を想定し、2002年2月に流行状況が不明な地域(スリランカのマタラ地区内の14の地域)で疫学調査を行った。2500の血液および尿検体を採集することが出来た。血液からはフィラリア抗原の定量を、尿からは抗原特異的なIgG4抗体の検出をする。尿の採取から抗体の測定までの過程を再点検することにより、尿ELISA法をさらに効率的に、より実用的に改良する。また就学児童の抗体価よりその地域の感染圧が推定できるようなモデルを作成する。 (3)尿ELISA法のマレー糸状虫症疫学調査への応用(韓国のグループとの共同研究) 現在マレー糸状虫症の診断にはバンクロフト糸状虫症に使われている抗原検出キットは発売されていない。従って疫学調査はもっぱら血液中のミクロフィラリアの検出によっている。私どもが開発したバンクロフト糸状虫症診断用の尿ELISAは、抗原にBrugia pahangiを使っており、マレー糸状虫症の診断にも応用できるものと考えられた。そこでこの尿ELISAを用いて、韓国のマレー糸状虫流行地から集められた尿サンプルの抗体を測定したところ、感度・特異性についてはさらに検討が必要であるが、バンクロフト糸状虫症の場合と同様に抗体が測定され、この尿ELISAがマレー糸状虫症疫学調査にも使用できることが強く示唆された。
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