研究概要 |
我が国の地域的に異なるA(名古屋市),B(大垣市),C(山口市)3病院におけるディフィシル菌関連下痢症からのディフィシル菌分離株、合計87菌株(A,34;B,28;C,25株),および米国,ニューヨーク市のD病院での集団発生における分離菌株33菌株をPCRリボタイピング,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE),およびウェスタン・イムノブロッティングにより解析し、院内感染流行株の分子遺伝学的特性について検討した。A,B,C,各々34株中22(65%),28株中18株(64%),25株中11株(44%)がPCRリボタイピングにおいてsmz型を示した。また,これら51株全株ともにPFGEではDNA破壊が起こり型別が不能であった。更に、これらの菌株はウェスタン・イムノブロッティングにおいて,Delmee et alの10種類の血清のいずれに対しても反応陰性であり,新たに作製したsmz株1株に対する抗血清に対し、上記51株全株共にウェスタン・ブロッティングにおいて同一のパターンを示し、これらの菌株は同一の血清型(JPと命名)であることが分かった。以上の結果は我が国においてはPCRリボタイプsmz,PFGE型別不能,血清型JPの菌株が院内感染流行株である可能性を示唆している。米国分離院内感染流行菌株はPCRリボタイプおよび血清型において我が国における流行株とは異なっていたが、PFGEでは型別不能であり、この点においては我が国における流行株と同一の性状を示した。異なる7群の社会集団(集団における被験者数,36-627名)における健康成人,合計1234名の糞便におけるディフィシル菌保有を検討した。各集団におけるディフィシル菌保有率は4.2%〜15.3%であり,総計94名(7.6%)においてディフィシル菌の存在が認められた。94名中38名について6〜7ケ月後に再度検討され,12名(32%)に本菌の存在が再度認められた。平成13年度においては更なる菌分離を行い、流行菌株との比較において分離菌株の分子疫学的解析を行う。
|