Escherichia coliの細胞表層には、莢膜多糖、リポ多糖、entero bacterial common antigenなど複数の糖鎖が共存している。いずれの多糖も内膜の細胞質側で合成され、合成後ペリプラズム間隙を経て外膜に輸送されると考えられている。これら多糖の膜輸送経路を明らかにする目的で、以下の実験を行い成果を得た。 1、E.coliF719(O9a:K31)株から莢膜多糖K31合成遺伝子をクローニングした。E.coliK31多糖はE.coliF719株では莢膜を形成せず、短い糖鎖がリピドAに結合して存在している。E.coliK-12株でも、K31多糖はリピドAに結合し、O多糖の長さを調節する遺伝子であるwzz変異株では糖鎖の長さが短く、wzz^+株では長い糖鎖が合成された。O9多糖とK31多糖の合成遺伝子を共存させると、O9多糖がK31多糖に優先して合成されることが明らかになった。 2、1の結果を野生株で確認するために、F719株でO9多糖が合成できない変異株を作成した。この過程で本来莢膜を作らないF719株から、莢膜を作る変異株を分離することができた。この莢膜形成変異株にwzz遺伝子を導入すると、莢膜は形成されず、リピドAにK31多糖が結合したK_<LPS>が合成された。 以上の結果から、K31多糖合成が過剰に行われると、リピドAに結合できなかった多糖が細胞外に輸送され莢膜を形成すること、そのキー蛋白としてWzzが働いているという可能性が示唆された。現在K31多糖合成遺伝子の塩基配列を決定するとともに、F719株におけるO9多糖とK31多糖の合成・輸送過程を調べている。
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