研究概要 |
Bartonella henselae由来の血管内皮細胞増殖因子,及び関連事項について平成14年度には下記の結果を得た。 1.血管内皮細胞増殖因子の精製:B. henselaeを大量培養し,培養上清中に分泌される内皮細胞増殖活性物質をパーフュージョンクロマトを用いて分画した結果,増殖活性を示す画分を得てその性状を検討した。しかし,分画操作の過程で活性がかなり失われ,十分なレベルの精製には至らなかった。現在,さらに大量の試料を調製し精製を続行中である。 2.B. henselaeによる炎症性サイトカインの発現誘導活性の検索:B. henselaeをヒト末梢血単球と混合培養し,単球から培養上清中に発現されるIL-8およびMCP-1など炎症性サイトカインについて検討した。その結果,単球からIL-8,およびMCP-1が添加菌濃度依存性に産生された。この効果はUVや加熱などによる不活化菌でも認められ,菌体成分の煮沸処理や硫酸ポリミキシンB処理にても失活しなかった。この現象は,本菌による血管増生性病変の形成機序の一端を担っていると考えられた。 3.B. henselaeによるヒト抹消血好中球のアポトーシス抑制作用:B. henselaeを好中球と16時間作用させた場合,好中球のアポトーシスが抑制された。この活性は,菌を5%FBS添加M199培地で4日間培養した上清中にも認められ,パーフュージョンクロマトによる分画の結果,強い活性を示す単独の画分が得られた。この画分も病変形成に重要な役割を担っていると考えられ,内皮細胞増殖因子との関連を含めて現在その生化学的性状を精査中である。 4.菌体線毛に関する検討:B. henselaeによる内皮細胞増殖促進,炎症性サイトカインの発現誘導,および好中球のアポトーシス抑制作用のいずれにおいても,本菌の線毛は全く関与していないことが明らかとなった。
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