研究概要 |
コレラ菌はヒト腸上皮細胞によく結合するが、その接着因子は不明である。コレラ菌の線毛は腸上皮細胞への接着性を有しないが、非コレラ性Vibrio cholerae O34の或る株NAGV14に接着性線毛を見出した。形態的にはコレラ菌のMSHA線毛と類似したNAGV14線毛のVibrio choleraeにおける分布を調べるため、V14線毛のmajor subunit proteinをコードする遺伝子を解析した。線毛の構造遺伝子は49605bpから成り、27bpのleader sequenceを有し、161のアミノ酸をコードしていた。N-末側のアミノ酸配列はコレラ菌のMSHA線毛と相同性が高く、C-末側は全く異なっていた。MSHA,NAGV14共、C-末近くに2つのシステイン残基を有していたがその間隔は異なっていた。従って線毛の接着性はC-末側の構造によるものと考えられるので、その構造がVibrio choleraeの中でどのように分布しているかを検索した。プライマーをNAGV14に特異的なC-末側から設計してPCRを行った結果、コレラ菌84株(O1=72,O139=12)からは全く検出されず、非コレラ性Vibrio cholerae93株の内4株だけがこの遺伝子構造を有していた。NAGV14線毛は非コレラ性Vibrio choleraeの病原因子としては更に研究されるべきであるが、コレラ菌の定着因子(接着因子)としてはあり得ないということになった。MSHA線毛はin vitroの実験に関する限り接着性を持たないが、Vibrio choleraeのなかでコレラ菌のみが疾患の流行を起こし、かつMSHA線毛を有することから次年度以降はMSHA線毛の解析を深めて行くと同時に外膜蛋白の解析が必要がある。
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