研究概要 |
コレラ菌の腸上皮細胞結合においてその接着因子が不明のままVibrio cholerae O34の或る株NAGV14に接着性線毛を見出し、V14線毛のmajor subunit proteinをコードする遺伝子を解析し次の結果を得た。構造遺伝子は486bpから成り、9個のアミノ酸からなるleader sequenceを有し、162のアミノ酸をコードしていた。N-末側のアミノ酸配列はコレラ菌のMSHA線毛と相同性が高く、C-末側は全く異なっていた。しかしその構造はコレラ菌からは全く検出されず、コレラ菌の定着因子(接着因子)としてはあり得ないということになった。この研究中にMSHAとNAGV14線毛は共に単一蛋白ではなく、少なくとも2種類のマイナーサブユニットが存在し、それは両線毛間で共通であることが判明した。そこでこのマイナーサブユニットmshB, mshOのリコンビナント蛋白とその抗体を作成し、腸上皮細胞接着性の検討を始めている。一方、防御抗原については死菌ワクチンの不確実性から、in vivoにおいてのみ発現する蛋白を想定し、ウサギ腸管結紮モデルから回収したコレラ菌について検討した。その結果病巣のコレラ菌は培養菌には見られない15kDaおよび116kDaの外膜蛋白を発現していた。このうち15kDaの蛋白は回復期患者血清と反応したが、116kDaの蛋白は反応しなかった。15kDa蛋白に対する抗血清は腸管ループ内のコレラ菌を凝集させたことから、この蛋白はin vivoで菌体表面に露出しているものと考えられ、防御抗原としての可能性を追究する必要が生じてきた。最終年度はMSHAとNAGV14線毛のマイナーサブユニットmshB, mshOとin vivo発現の15kDa外膜蛋白の機能解明を行なう。
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