研究概要 |
コレラ菌の腸上皮接着因子と防御抗原を解明するため、接着性線毛であるV14線毛とコレラ菌の関係について研究した。V14は線毛コレラ菌(V.cholerae O1)に存在しなかったが、菌体内にその抗原物質を検出することができた。菌体内のV14抗原物質は精製に難航したため、その本態を遺伝子側から解析した。V14線毛蛋白のN-末アミノ酸配列からスタートして線毛の主要構成蛋白(vcfA)の構造遺伝子の全塩基配列を決定した。推定アミノ酸配列は、コレラ菌のMshAに対して63%の相同性を有していたが、C-末側の配列は全く異なっていた。即ち、コレラ菌のMSHA線毛は独特であり、V.cholerae non-O1,non-O139株に広く分布するtypc 4 piliはその主要構成蛋白に関する限り機能的に異なっていると考えられた。そこでMSHA線毛・VCF線毛を含むV.cholerae type 4 piliの全構造遺伝子を解析し、個々の遺伝子産物の機能を調べた。その結果V.cholerae type 4 piliは3種類の蛋白(major subunit=mshA, miner subunits mshB, O)から構成されている事が判明し、さらに最下流のORF(mshQ)は線毛の形成に関与する外膜蛋白であることが判明した。V14接着性線毛のmshQに当たるORFでは、そのN-末に217残基のアミノ酸を余分にコードしており分布はV.coleraeの4%程度しか見られなかった。V.choleraに広く分布するtype 4 piliのうちV14線毛はmshAとmshQに異型配列を示すMSHA線毛のvariantであるという結論に達した。ΔmshA,ΔmshQ株でも細胞への付着性に変化を来さなかったことから、コレラ菌の細胞接着因子は他に求めなければならない。
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