我々は、エイズ合併日和見真菌感染症の分子病態を明らかにするために、動物モデルを用いて真菌に対する感染防御機構について検討を行っている。本研究では、各種遺伝子欠損マウスなどを用いてCryptococcus neoformans (Cn)感染防御におけるNK、NKT、γδT細胞といった自然免疫リンパ球の役割について詳細な解析を行ってきた。Cnを肺内に感染させると肺及び所属リンパ節にこれらの細胞が集積すること、またその集積にはNK、NKT細胞がMCP-1を必要とすること、γδT細胞はMCP-1非依存的であることを明らかにした。NKT細胞の役割として、この細胞を遺伝的に欠損したマウスを用いて、Cnに対するTh1反応及び感染防御の成立にNKT細胞が重要であることを見出した。一方、γδT細胞についてはマウスに抗体を投与することでこの細胞を除去してその影響を検討したところ、Th1反応の誘導を抑制的に制御している可能性を示す結果を得ており、さらに詳細な解析を行っている。また、東南アジアにおいてエイズに合併する重要な日和見感染真菌であるペニシリウム・マルネッフェイによるTh1反応誘導過程におけるオステオポンチンのIL-12産生誘導作用についてヒトの末梢血単核球を用いて明らかにしてきた。本研究を通して真菌に対する自然免疫から獲得免疫に至るプロセスを明らかにすることができ、今後のエイズ合併真菌感染症に対する対策を構築する上で基礎的研究を通した貢献ができたと考えている。
|