研究概要 |
グラム陰性各菌種は、染色体上に誘導型class C型β-ラクタマーゼの構造遺伝子ampCを保有しているため、臨床分離菌からはAmpCを多量産生するセフェム系薬耐性菌が多数検出され治療上問題となる。このAmpC多量産生の遺伝的背景をEnterobacter cloacaeのampCあるいはampR-ampCクローンampR欠損変異株pKU402および変異株pKU403を用いてセフェム薬CAZ耐性化について調べた。その結果、ampD変異株を宿主とした場合、DNA結合タンパク質ampR欠損させたpKU402からセフェム高度耐性菌は分離されなかったが、pKU403からCAZ高度耐性菌が10^<-6>頻度で分離され、そのAmpC量は親株の70〜450倍を示した。DNA塩基配列を調べた結果、AmpRのR86C, D135NとN135Vが得られた。この変異株pKU406, pKU404, pKU405をE.cloacaeに形質転換させるとampC量は著しく増量した(報告済み)。また、DNA結合蛋白質AmpRを活性化させ、ampCの転写を活性化させるシグナル伝達遺伝子と考えられているampG欠損株ではpKU403のAmpCの発現が殆ど見られなかったが、pKU404およびpKU406のAmpC発現はampG保有株とampG欠損株間でほぼ同程度十分量検出された(AAC投稿中)。セフェム薬高度耐性化にampR遺伝子変異が関わっている可能性とプラスミド化されたpKU403のAmpC発現がampR変異によってAmpC発現に欠かせないAmpGを必要としないことも明らかとなった。また、pKU403保有ampD野生株からCAZ変異株は10-7頻度で分離され、一部にAmpC酵素活性が認められた。この点については継続して検討する予定である。
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