研究概要 |
AGS(ヒト胃癌由来)細胞にH.pyloriHSP60精製蛋白を添加し、アポトーシス誘導細胞をFITC標識Annexin-Vとヨウ化プロピジウムの二重染色によりフローサイトメーターで解析した。精製HSP60を添加した場合の24hr,48hr後のアポトーシスインデックス(AI)はそれぞれ0.34,14.46であった。対照の24hr,48hr後のAIは0.38,7.45であり、添加48hr後における精製HSP60による胃上皮細胞のアポトーシス誘導が確認された。 H. pyloriHSP60に対するモノクローナル抗体(H9,H20)を用いて、H.pylori感染者48例、H.Pylori非感染者22例の胃粘膜組織との反応性を免疫組織染色法により調べた。H9抗体は感染者48例中38例(79%)、非感染者22例中22例(100%)と反応し、これらの胃粘膜細胞上にH9エピトープが発現されていることがわかった。一方、H20抗体は感染者48例中18例(38%)、非感染者22例中7例(32%)と反応し、これらの胃粘膜細胞上にH20エピトープが発現されていた。発現率に関しては感染者と非感染者の間に有意な差はなかった。 HSP60融合蛋白をアジュバントのコレラ毒素とともにC57BL/6マウスに経口投与(計5回)し、1週後に.H.pyloriを経口接種した。54日後の胃炎スコア(1.27±±0.43)はHSP60経口免疫マウスで有意に高かった。対照のコレラ毒素単独投与の胃炎スコアは0.19±0.33であった。また、20日後のH.pyloriの定着スコアはHSP60免疫マウスで0.70±0.66、対照マウスで1.96±0.57であった。 これらの研究結果は本菌HSP60が胃粘膜にストレスを与える病原因子としても機能する可能性を提示している。さらに、本菌HSP60優れたワクチンコンポーネントになり得るものと考えられる。
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