研究概要 |
今回私どもは、インフルエンザ菌のAcrAB様排出システムによるマクロライド薬耐性についての検討を行う為に、まず、AcrAB様排出システム欠損株の作製を行い、さらに未だ同定されていないAcrAB様排出システムの外膜コンポーネントの探索を行った。 インフルエンザ菌のGenome Databaseを利用して大腸菌のAcrAB排出システムの外膜コンポーネントであるtolC遺伝子と相同性をもつ遺伝子の検索を行った。その結果、tolC遺伝子と37%の相同性を示す遺伝子(locus number HI1462)を発見した。ここで検索したHI1462遺伝子は、大腸菌のAcrAB排出システムと相同性のあるHI0894遺伝子およびHI0895遺伝子と共に相同的組換えによりKanamycin耐性カセットの挿入を行い染色体上から欠損させ、HI0894,HI0895,HI1462遺伝子欠損株の作製を行った。これらHI0894,HI0895,HI1462遺伝子の欠損は、PCR法による遺伝子の増幅と膜画分のSDS-PAGEによるバンドの消失で確認することが出来た。 マクロライド薬の薬剤感受性の比較を行うためにHI0894,HI0895,HI1462遺伝子欠損株と標準株を用いて最小発育阻止濃度(MIC)の測定を行った。その結果、これら欠損株は標準株と比べて14員環マクロライド薬(Erythromycin,Clarithromycin,Telithromycin,ABT-773)で8〜16倍、15員環マクロライド薬(Azithromycin)では4倍、16員環マクロライド薬(Spiramycin,Josamycin,Leucomycin,Rokitamycin)では32〜64倍感性化していた。これらの結果より、インフルエンザ菌のAcrAB様排出システムは、すべてのマクロライド薬の排出に関与し、特に16員環マクロライド薬の基質特性が高いと考えられた。また、β-ラクタム薬やキノロン薬、テトラサイクリンなどは排出されなかったが、アミノグリコシド系抗菌薬であるGentamicinやDibekacinの排出を確認することができた。さらにHI1462遺伝子欠損株はHI0894,HI0895遺伝子欠損株と同様の薬剤感受性を示した。 以上の結果から、HI1462遺伝子はAcrAB様排出システムの外膜コンポーネントであると考えられる。
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