研究概要 |
イオタ毒素は、ADPリボシル化活性を有するia成分と細胞内にiaを送り込むib成分からなる二成分毒素である。Hg^<2+>を用いる重原子同型置換法にてCys残基が存在しないiaの結晶解析を行った。遺伝子操作によってハイドロパシーのデータからタンパク質の表面に露出していると推察される6個のSer残基をCys残基に置換した変異ia成分を単離し、空間群P1の結晶系でNADPH、およびNADHの共結晶を得、それぞれ2.1と1.8Å分解能でX線解析した。この構造解析から明らかとなったNAD^+結合サイト・キャビティー内のアミノ酸残基とADPリボシル酵素ファミリーのアミノ酸配列から本酵素活性に重要と推察されている3つのモチーフ中の代表的な6個のアミノ酸残基(J.Bacteriol.182,2096-2103,2000)を特異的部位変異法にて種々のアミノ酸に置換し変異ia成分を作製、精製し、酵素活性を解析した。この結晶解析と変異成分の生化学的解析から、以下に述べるように、ia成分によるADPリボシル機構は、NAD^+分解と、その時生成したADPリボシル部がアクチンに転移される二つの反応過程で起こることが判明した。すなわち、1)NAD^+のニコチンアミドリングは、キャビティー内のPhe-359、そのリングのN^+とリボース部は、Glu-380、リン酸結合は、Arg-295,-352によって固定されて、NAD^+分子がリング状となる。2)ニコチンアミドリング中のアミド部の水素が分子内のリン酸エステルに引っ張られて、Nグリコシド結合がSN1反応で切断される。3)生じるオキソニウムイオンをGlu-380のカルボキシル基が固定する。4)Glu-378のカルボキシル基は、カウンターイオンとして攻撃してくるOH^-からオキソニウムイオンをアクチンのArg-177が近づき反応するまで保護する。
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