研究概要 |
目的 我々はこれまでにHTLV-IとIL-6Rに関するいくつかの実験を行い、HTLV-IがIL6Rの発現に関わっていることを示唆する成績を得ている。今回、HTLV-I感染とIL-6Rの誘導および可溶性IL-6Rの産生について検討した。 方法 HTLV-I感染細胞、MT-2,MT-4,TY8-3/MT-2,TY8-3/TCL-KanなどおよびHTLV-1のTax遺伝子保有JPX9などを用いた。これらの細胞からmRNAを精製し、RT-PCR法によってIL-6RのmRNAの検出を行った。IL-6Rを認識するモノクロナル抗体を用い、FACSにてレセプターの発現を調べるとともに、ELISAにてsIL-6Rの定量を行った。 結果と考察 一部のHTLV-I非感染細胞でもIL-6Rを発現するものが認められたが、HTLV-I感染細胞では調べた細胞株すべてがIL-6Rを発現していた。胸腺腫より樹立したT細胞株、TY8-3ではIL-6Rは認められなかったが、HTLV-I感染TY8-3/MT-2,あるいはTY8-3/TCL-Kan細胞株ではIL-6RのmRNAを発現していることがRT-PCR法により、また、FACS解析にてIL-6Rが表出していることが明かとなった。ELISAにてTY8-3およびHTLV-Iを感染させたTY8-3細胞の培養上清についてsIL-6Rの定量を行ったところ、非感染細胞では検出されなかったが、HTLV-I感染TY8-3株では1900-2100pg/mlの濃度でsIL-6Rの産生が認められた。HTLV-IのTax遺伝子を保有するJPX9株をカドミウム存在下で培養しTax蛋白を産生させると、これに伴ってIL-6Rの発現が認められた。一方、変異TaxではIL-6Rの発現は認められなかった。 以上の成績からHTLV-IはIL-6Rおよび可溶性IL-6Rの産生を誘導すること、この誘導にはウイルスの遺伝子調節因子、Taxが関与していることが示唆された。次年度はIL-6Rおよび可溶性IL-6Rの成人T細胞白血病(ATL)およびHTLV-I関連脊髄麻痺(HAM)の病態への関与について検討する。
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