1、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、感染者の抹消血中において、CD45RO発現細胞に選択的に潜伏感染している。HTLV-1で不死化した13種類のT細胞株を用いて、CD45ROの発現を検討したところ、すべてのIL-2依存性細胞株(5/5)がCD45ROを発現していたが、8株中2株のIL-2非依存性細胞株のみがCD45ROを発現していた。CD45RO(+)IL-2依存性細胞株はウイルス蛋白Taxの発現量が低く、TaxとCD45ROの発現量は逆相関を示した。以上の結果は、IL-2依存性Tax低発現細胞株が生体内におけるHTLV-1潜伏感染細胞に対応すること、生体内の潜伏感染細胞はIL-2非依存性ではなく、IL-2依存性に不死化していること、このIL-2依存性不死化にCD45ROが何らかの役割を果たしていることを示唆している。 2、すべての(11/11)成人T細胞白血病患者の抹消血リンパ球において、転写因子AP-1が著名に活性化していることを見いだした。AP-1は細胞増殖、炎症などに関与する様々な細胞遺伝子の発現誘導に関与することから、この活性化がATLの病態に深く関与する事が強く示唆された。 3、HTLV-1のTaxがAP-1結合配列を介して、遺伝子発現を活性化することを証明した。TaxはすべてのAP-1配列を活性化するのではなく、AP-1結合配列を2個持っているリポーターを選択的に活性化した。この発現誘導は、これまでに知られている転写因子NF-kBおよびCREBを介した転写活性化とは異なることが示唆された。 4、TaxがヒトT細胞株において、アポトーシス抑制遺伝子bcl-xlの発現を誘導することを明らかにした。HTLV-1で不死化したT細胞株はアポトーシス抵抗性を示すことから、この発現誘導がこのアポトーシス抵抗性に関与することが示唆された。
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