既に報告したように、SV5(WR株)のF蛋白(WR-F)の22番目のLeuをProに変えた変異F蛋白(L22P)はBHK細胞やHeLa細胞においてHN蛋白非依存性の多核巨細胞誘導能を示す。 さらに、L22PはエンドサイトーシスされるがWR-Fはされないこと、またL22PのF1が分解して36kDaの産物を生ずることも明らかになっている。 [結果] 1.L22PのF1の細胞質内領域を延長したキメラ蛋白もHN蛋白非依存性の多核巨細胞誘導能を持つが、このキメラ蛋白発現細胞にも36kDaの蛋白が出現したことから、36kDaの蛋白はL22PのF1のN末側に由来するものと考えられた。 2.L22PのF1のC末側に由来する15kDaの蛋白を検出した。またL22Pのエンドサイトーシスは、コレステロール依存性であることが判明した。 3.WR-F発現細胞を47℃で熱処理すると、HN蛋白非依存性の多核巨細胞が誘導され、WR-Fがエンドサイトーシスされることを見い出した。この処理によりWR-Fに抗L22P抗体(mAb 21-1)のエピトープが露出した。 [考察] WR-Fは熱処理によりpostfusion conformationへと構造変化することが示唆された、同時にエンドサイトーシス、mAb21-1のエピトープの露出が起こることから、多核巨細胞膜内に挿入されているfusion peptideがコレステロールと結合し、これがエンドサイトーシスのシグナルになるものと推論した。またこの構造変化はmAb 21-1のエピトープの存在するhead regionに生じるものと考えられる。L22Pではこのエピトープが解裂前から露出しているが、このためにpostfusion conformationへと構造変化を起こしやすく、37℃でもHN蛋白非依存性の多核巨細胞誘導能を示すものと結論した。
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