研究概要 |
我々の研究室では現在、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)若しくはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi's sar coma associated her herpesvirus、KSHV)の溶解複製の初期発現するウイルス遺伝子産物の機能に焦点をあて研究を進めている。 K5遺伝子は同じγヘルペスウイルスであるbovine herpesvirus4(BHV4)のみにhomologueがあるとされる前初期〜初期遺伝子産物である。この遺伝子産物に対する特異的なモノクロナール抗体を作製し、KSHV感染細胞であるBCBL1やBC3細胞を用いて細胞内局在、発現動態を解析した。 遺伝子は一つのイントロンを有するが蛋白としてはゲノム配列から推定されたK5のopen reading frameから翻訳される。phorbol ester等で感染細胞を刺激すると約2時間後には蛋白発現がwestern法や蛍光免疫〓色で確認され、ヘルペスウイルスDNA複製阻害剤であるphosphonophrmic acid(PFA)や、蛋白合成阻害剤であるcycloheximide(CHX)を用いた実験から前初期遺伝子として発現していることが確認された。細胞内局在は細胞質で免疫電子顕微鏡解析から特にERに局在していることが解った。また機能としてはMHCclasslの細胞表面表出を抑制することを示し、溶解複製時に免疫担当細胞からの攻撃を回避するために機能していることが示唆された。 一方、ORF50遺伝子産物は典型的な前初期遺伝子であり、強い転写誘導活性を有する。どのようなウイルス遺伝子がその標的になるのか、またどのような機構で転写を誘導するのかについて解析を進めているが、我々は独自にK9(viral interferon regulatory factor,vIRF)遺伝子がその標的になることを見いだした。現在その特異的なシスエレメントの同定を行っている。またこの蛋白は核移行シグナルをN端近くに有し、これを介した核移行が転写活性誘導能に必要であることを示した。
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