研究概要 |
(1)センダイウイルス(SeV)浜松株塩基配列決定とcDNAからのウイルス回収系の構築 SeV浜松株の全塩基配列を報告した(文献2)。さらに浜松株ゲノム全長に対応するcDNAを構築して、それからウイルスを回収することに成功した(文献8)。 (2)発育鶏卵で継代した浜松株の弱毒化にともなう変異の同定 強毒浜松株を、発育鶏卵で系統的に継代する弱毒化実験(文献4)で得られた代表的なウイルス・クローンの塩基配列を解析し、変異を同定した(文献8,10)。卵で15代継代して得られて、MLD_<50>で165倍弱毒化したEl5cl2と親株を比較すると、ウイルスの転写・複製プロモーターであるリーダー配列に2カ所(U20A, U24A)と、RNAポリメラーゼL蛋白質に2カ所(A9362G/silent, A12174U/Ser to Asn)の変異があった。卵継代30代で分離されたウイルスにはさらにL蛋白質と受容体結合蛋白質のHN蛋白質に変異が蓄積し、これをマウスの肺で15代継代した強毒復帰株では、いくつかの復帰変異と、サプレッサー変異と考えられる変異があった。 (3)リーダー変異の浜松株弱毒化への関与 同定されたリーダー配列変異のウイルス病原性に対する影響を検討するために、(1)で開発したウイルス回収系を用いて、リーダー変異の片方(U20AまたはU24A)あるいは両方(U20A+U24A)を持つウイルスを作製した。両方の変異において肺内ウイルスの感染価は低下して、MLD_<50>で16倍弱毒化していた。片方の変異だけでは若干の変化にとどまった。これらの変異ウイルスの増殖の違いは、マウス個体だけではなくマウス気管支上皮初代細胞でも再現できた(文献4)。この培養細胞において、RNA合成を、ノーザンブロッティング・定量的RT-PCRで検討したが、ゲノムRNA量・mRNA量ともに明瞭な違いは検出できなかった。 以上のように、SeVの卵継代に伴う弱毒化について、ウイルス因子としてリーダーの変異が重要であることが明らかになり、SeVの宿主依存性にプロモーター部位が関連することが示唆された。L蛋白質の変異については現在解析を進めている。宿主因子の解明は、さらにプローモーター部位に結合する宿主蛋白質を検索する予定である。
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