研究課題/領域番号 |
12670285
|
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
高瀬 明 (余田 明) 創価大学, 生命科学研究所, 教授 (60236221)
|
研究分担者 |
福光 秀文 創価大学, 生命科学研究所, 助手 (00308280)
金松 知幸 創価大学, 生命科学研究所, 教授 (30104201)
渡辺 里仁 創価大学, 生命科学研究所, 教授 (30129746)
|
キーワード | レトロウイルス / 脳 / 神経病原性 / グリア細胞 / BDNF / NGF / レセプター |
研究概要 |
マウスレトロウイルスA8は、ラットに海綿状脳症を誘導する。ウイルス抗原は脳の血管周囲細胞およびグリア細胞に認められるが、神経細胞には検出されず、どのような機序で神経突起の空胞変性が起こるのかは不明である。一方、グリア細胞は、神経細胞との間に密接な代謝関連性があり、神経細胞の生存に適した環境づくりに深く関与していることが知られている。本研究は、レトロウイルスの神経病原性発現におけるグリア細胞の役割を明らかにすることを目的とするものである。今年度は、以下のような成果が得られた。 1.A8ウイルス感染ラットの脳において、ウイルス抗原陽性のグリア細胞の分布と海綿状変性部位の分布が一致することが明かとなった。 2.A8ウイルスを新生仔ラットに接種した場合は海綿状脳症を誘導するが、3週令のラットに接種した場合は、ウイルスは増殖するが病変は形成されない。各週令のラットの脳におけるレセプターの発現と分布を調べた結果、新生仔ラットでは、血管周囲細胞およびグリア細胞にレセプター蛋白が発現しているが、3週令のラットでは、レセプター蛋白を発現しているグリア細胞の数および発現量が減少していることが明かとなった。 3.アストログリア細胞株RCR-1にA8ウイルスを感染させると、細胞変性が起こることが示された。 4.ラット培養細胞におけるBDNF(脳由来神経栄養因子)およびNGF(神経成長因子)のmRNAをRT-PCRにより比較定量する条件を決定した。予備実験ではあるが、ウイルス感染グリア細胞において、BDNFのmRNAの減少傾向が見られた。 以上の結果は、病変形成においてグリア細胞が重要な役割を果している可能性を強く示唆するものである。また、ウイルス感染によるBDNFおよびNGFのmRNAの量的変化については、さらに詳細な検討を続けていく予定である。
|