HTLV-1TaxでトランスフォームしたRat-1細胞において活性化を受ける細胞遺伝子を8種類同定したところ、そのうち少なくとも4種類はインターフェロン応答遺伝子であった。また、Tax変異体およびNF-κBの発現実験から、これらの遺伝子の活性化は全てNF-κB経路依存的であることが示された。 さらに、Tax発現Rat-1細胞はウイルス(VSV)感染に対して抵抗性を示したため、活性化を受けていた遺伝子の一つで、抗ウイルス活性に関与する2′-5′オリゴアデニル酸合成酵素遺伝子の転写調節領域をルシフェラーゼアッセイを用いて解析し、そのインターフェロン応答配列がTaxおよびNF-κBの発現により活性化されることを明らかにした。 そこで、Tax発現Rat-1細胞の培養上清中のインターフェロン活性を測定したところ、有意な量のインターフェロン活性が検出された。インターフェロン分子種を特定するため、転写調節領域にNF-κBを持つことが知られるβ-インターフェロン遺伝子の発現をRT-PCR法で検討したところTaxによる活性化が観察され、また、培養上清中のインターフェロン活性は抗ラットβ-インターフェロン抗体により中和された。 次に、ATL患者末梢血における2′-5′オリゴアデニル酸合成酵素遺伝子およびヒトβ-インターフェロン遺伝子の発現をRT-PCR法で解析したところ、ATL細胞ではいずれの遺伝子も発現の活性化が観察された。これらの事実および、T細胞の分化に関与することが示されているschlafen-4遺伝子がRat-1細胞においてTaxおよびインターフェロンによって活性化されることから、ATLをはじめとするHTLV-1関連疾患の発症過程におけるβ-インターフェロン発現の機能的関与に興味が持たれた。
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