研究概要 |
世界の様々な地域に分布するHIVの詳細な遺伝学サブタイピングが可能になったことで,世界の各流行地におけるウイルスの起源やその伝播の様相が,全世界的な規模で明らかになりつつある。遺伝子配列の相互比較に基づいて,病原体の起源やその伝播のカニズム・流行拡大のダイナミズムを探る分子疫学的解析手法は,流行の成り立ちを解明する上で,極めて強力な武器となっている。しかし,塩基配列情報に基づく遺伝学的サブタイピングには,PCRおよび塩基配列決定あるいはへテロデュプレックス・アッセイなど煩瑣で高価な実験が必要とされる。そこで我々はHIVの抗原構造の差異を最も顕著に反映するgp120に着目し,それを抗原として用いたHIVの血清学的サブタイピング技術の開発を目指した。組換えgp120の発現には,動物細胞を用いた発現系の中で最も強力なシステムの一つであるセンダイウイルスベクターを用いた発現系を用い,HIV-1の様々なサブタイプ(A〜E)の組換えgp120の発現に成功した。これまでに,少なくともサブタイプEとBとの血清学的識別に組換えgp120を用いたEIA法がV3ペプチドを用いたEIAより1,000倍近く高感度であり,しかもgp120全体を抗原として用いるにも拘らず,抗原量及び抗体(血清)希釈を適切に選ぶことによって高いサブタイプ特異性が得られることを示した。
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