研究者らはHCV感染ヒト培養細胞MT-2Cから実際に複製可能なHCV分子種のクローニングを試みてきた。この際long RT-PCR法にて構造領域と非構造領域に分けて増幅し、配列を持つクローンを作りなおした。今回さらにコンセンサス配列を持つクローンからサブゲノムRNAレプリコンを用いた新たな方法でHCV RNAの複製する細胞系の確立をめざした。サブゲノムRNAレプリコンでは、HCV構造領域の部分をNeo耐性遺伝子およびEMCV-IRESに置き換えたdicistron構造とした。HCV RNA複製に必要な領域およびRNAの末端構造が保たれているため、培養細胞内での自律的なRNAの増殖がおこり、結果的にNeo耐性遺伝子の発現及び、G418選択によるコロニーが形成されることを期待した。 今回作製したクローン由来のレプリコンRNAをHuh-7細胞へトランスフェクションした結果、レプリコン複製細胞のみが選択的に増殖しコロニーの形成が認められた。また、それらの細胞をクローン化し検討を行った結果、HCVタンパクの発現、HCV RNAへの標識核酸の取り込みを認めレプリコンの複製が確かめられた(論文作成中)。さらに、コンセンサス配列をもつクローンだけではなく、より複製効率の高クローンを得るために、もともとの感染細胞内でのheterogeneityをそのまま利用しレプリコンのライブラリーの作製方法を確立した。このシステムを用いると臨床材料、たとえば肝炎患者の生検肝を用いNS全体を増幅し、比較的容易にレプリコンへの作製ができるようになる。また、NS全体の増幅ができなくても2分割してRT-PCRすることで増幅が可能な症例が増えると考えられる。これらのことで個々の肝炎患者に応じた治療法の選択へ道が開けるものと考えられる。さらに工夫することで、抗HCV薬のスクリーニング系として非常に有用であると考えられる。
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