リンパ管において血流が認められる突然変異マウスを発見、解析を始めたことを昨年報告した。このマウスにおける血流異常がどのような血管・リンパ管の形成異常に起因しているかを知るために、TRITC標識ゼラチンを成熟個体の腹部大動脈より投与し、TRITCで標識される脈管構造の共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った(富山医科薬科大学 大谷 修 教授との共同研究)。その結果、野生型マウスの小腸粘膜絨毛では毛細血管に蛍光シグナルが観察されるのに対して、ホモ型変異マウスのそれでは毛細血管に加え、中心リンパ管においても蛍光シグナルが観察された。従って、血管からリンパ管への血流の移行は、小腸粘膜絨毛における毛細血管から中心リンパ管への移行に端を発している可能性が高い。また、この変異マウスの原因遺伝子の解析のための交配実験を開始している。 一方、リンパ管を容易に検出する実験系を確立するため、リンパ管内皮細胞特異的に標識遺伝子を発現する遺伝子導入マウス作成を行っている。既に特異的発現が報告されているLYVE-1、prox-1、VEGFR-3の遺伝子を利用した導入遺伝子の構築を進めた。マウスLYVE-1ゲノムDNAを利用した導入遺伝子の構築は、まずPCRを利用したin vitroミュータゲネシスにより、第1及び第2エクソンにそれぞれマルチクローニングサイトを導入すると同時に、本来のLYVE-1タンパク質の開始コドン以降に存在するATG配列に対して1塩基置換変異を導入した。翻訳制御配列の支配下で核移行シグナル付きβ-ガラクトシダーゼを発現するIRES-nls lacZ pAカセットを第2エクソンに導入したタイプを始めとする数種類の導入遺伝子を構築し、現在C57BL/6J受精卵への顕微注入による遺伝子導入マウスの作成を試みている。prox-1、VEGFR-3遺伝子を利用した導入遺伝子も構築中である。
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