CD40シグナルによりサイクリン依存性キナーゼインヒビターkip1およびc-myc遺伝子の転写が制御される。CD40シグナルによるkip1の転写制御における転写因子NF-κBの関与について昨年度に引き続いて検索したKip1のプロモーター領域3kbを持つルシフェラーゼコンストラクトを3T3細胞などに導入し、kip1のプロモータ活性を測定したところ、c-Relの発現によりそのプロモーター活性は著明に減弱した。この減弱は、c-Relの活性をIKKのドミナントネガティプフォームで阻害すると解除され、また、HTLVIやSV40に由来するSP1サイトを持つプロモターの活性は阻害しなかったので、NF-kB特異的である。プロモーター領域の種々の欠失変異コンストラクトを作成することにより、NF-κB結合配列を含む-581と-348の約250bpの領域にNF-κBの活性化に反応して、プロモーター活性を低下させる領域があることを明らかにした、しかし、この領域のNF-κB結合配列に変異を導入しても、c-Relによる転写阻害は解除されなかった、さらに、種々の欠失変異コンストラクトについて検索を行ったが、転写活性化能がある限りc-Relによる転写阻害が観察された。これらの結果から、この領域の転写活性化に必要な転写因子の活性化をc-Relが阻害することが示唆されたが、その詳細については、今後の検討が必要である。 次いで、CD40シグナルにより転写調節される遺伝子の役割を明らかにするために、まず、レトロウイルスベクターを用いてB細胞株WEHI-231に外来遺伝子を効率よく誘導できる系を確立した。この系を用いてCD40の標的遺伝子であるkip1をWEHI-231に発現したところ、アポトーシスが誘導された。この結果により、CD40シグナルによるkip1の転写阻害が、そのB細胞生存作用に関与することが強く示唆された。
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