CD40シグナルは免疫系において重要な役割を果たす。CD40を介するシグナルにより種々のシグナル伝達分子が活性化し、さらに、NF-κBなどの転写因子の活性化がおこる。しかし、これらのシグナル伝達分子がどのようにして標的遺伝子の転写制御を行うのかについては不明の点が多い。また、これら標的遺伝子がどのような機能を果たしているのか不明な点も多い。我々は、Bリンパ球では、CD40シグナルにより細胞周期阻害因子p27^<Kipl>の発現がmRNAレベルで低下することを示している。そこで、CD40シグナルがkipl遺伝子の転写を抑制する機構について解析した。3T3細胞を用いてkiplのプロモーター活性を測定したところ、NF-κB特異的にそのプロモーター活性は著明に減弱した。プロモーター領域の種々の欠失変異コンストラクトを作成することにより、NF-κB結合配列を含む-581と-348の約250bpの領域にNF-κBの活性化に反応して、プロモーター活性を低下させる領域があることを明らかにした。しかし、この領域のNF-κB結合配列に変異を導入しても、c-Relによる転写阻害は解除されなかったなど、その詳細に今後の課題である。次いで、CD40シグナルにおけるp27^<Kipl>の発現低下の役割を検索した。p27^<Kipl>は細胞周期回転に必須のキナーゼCDK活性を阻害するので、この発現低下がBリンパ球の増殖の誘導に関与することが示唆される。また、B細胞株WEHI-231細胞では抗原受容体架橋によるアポトーシスがCD40シグナルにより阻害されるが、レトロウイルスベクターを用いてkiplをWEHI-231にを誘導すると、抗原受容体架橋によるアポトーシス阻害が部分的に解除された。この結果により、CD40シグナルにより抗原受容体架橋によるアポトーシスが阻害されるためには、kiplの転写阻害が必要であることが明らかとなった。kiplの転写阻害はCD40シグナルによるB細胞の増殖誘導ばかりでなく、その生存にも関与することが強く示唆された。
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