細胞増殖、特に細胞周期の研究は主に繊維芽細胞で行われ多くの成果が蓄積している。細胞周期機構の基本はリンパ球にも適用されるが、細部については違いがみられる。E2F1の過剰発現により繊維芽細胞では細胞周期がS期まで進行するが、ヒトT細胞株では細胞周期の進行は誘導されずE2F1の活性上昇も認められないのが一例である。我々はT細胞の増殖因子であるインターロイキン2(IL-2)によるT細胞の増殖を、細胞周期の観点から詳細に解析した。IL-2はE2Fを活性化して細胞周期を進行させ細胞を増殖に導く。IL-2によるE2Fの活性化機構の解析は、次の一連の反応によることを明らかにした。IL-2は、cyclin-dependent kinases(CDK)のinhibitorsの内p19とp27を減少させる。それとともにCDKそのものとそのパートナーであるD-type cyclinの発現量を増加させる。両者が相まってCDKの活性化が生じる。活性化したCDKはp130とともにpRb、p107のRbファミリー分子をリン酸化する。その結果、Rb分子から解離しE2F4が活性型となる。このことは、IL-2刺激により休止期のE2F4/p130の複合体が減少し、遊離型のE2F4が増加していることで示された。遊離型のE2Fは休止期の細胞ではみられない。遊離型E2F4は活性化E2FでDNA結合能を示した。また、休止型複合体にかわってS期複合体が増加した。S期複合体はp130、p107、E2F4、Cdk2、cyclinAを含んでいた。以上より、IL-2はT細胞で、CDKinhibitor活性を低下させCDK/cyclin複合体の増加によりCDKを活性化し、pRbファミリーをリン酸化することにより活性型E2F4を生じ、細胞周期を進行させT細胞を増殖させるものと考えられる。
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