感染防御におけるTLRの役割を明らかにするため、マウスマクロファージにおける各種TLRの遺伝子発現パターンをノーザンブロッティング法にて比較したところ、TLR2、TLR3、TLR5については無刺激時には弱い発現を認めるだけだったが、LPS刺激にて著明な発現誘導を認めた。一方、TLR4、TLR6は恒常的に発現されていたが、LPS刺激による発現量の増加は認めなかった。これより、TLRファミリー遺伝子はマクロファージにおいて、恒常的に発現を認めるものと、感染時に発現が誘導されるものの二つに大別されると考えられる。次にマウスTLR2遺伝子を単離し、その転写開始部位の決定、プロモーター機能解析を行い、転写開始部位より160bp、1115bp上流にある2つのNF-κB結合部位と、1267bp上流にあるCREB結合部位がLPSによるTLR2発現誘導に重要な働きをしていることを見いだした。また、279bp上流にはSTAT5の結合部位も存在し、IL-15によるTLR2発現誘導に関わっていた。 また、LPSの下流シグナル伝達機構を明らかにするために、TLR4の細胞内領域を餌に用いたyeast two-hybrid法を用いて、TLR4の結合蛋白をスクリーニングした。すでに報告されているMyD88に加えていくつかの蛋白が同定されたが、そのうちの一つはJNKの結合蛋白として報告されているJIP3であった。JIP3は細胞内で、TLR4、またTLR2とも結合しており、また、JIP3を強発現させるとLPS刺激マクロファージにおけるJNKの活性化が著明に増強した。これより、JIP3がLPSによる細胞機能調節に関与している可能性が考えられた。 他に、歯周病の細菌感染による憎悪化におけるTLRの役割、TLR4に認められる選択的スプライシング産物の機能構造解析などを行った。
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