γδT細胞はヒトやマウスの腸管上皮内に数多く分布することが明らかにされているにもかかわらず、その発達分化機構や生体内生理機構は未解明である。マウス腸管上皮内T細胞(IEL)はαβ-IELとγδ-IELで構成されるが、その大多数は胸腺とは無関係に腸管粘膜局所で発達分化する。私は本研究によって、IEL前駆細胞、特にγδ-IELの前駆細胞が分布する未分化リンパ球の小集積(クリプトパッチ)を同定し、リンパ骨髄系幹細胞がクリプトパッチを経由して上皮内へと移行することによって成熟αβ-及びγδ-IELが発達分化することを明らかにした。 次に、γδ-IELを欠損する(δ^<-/->)マウスでは腸管上皮細胞(IEL)の新生/発達分化が抑制されることに着目して、δ^<-/->マウスやαβ-IELを欠損する(β^<-/->)マウス及び両IELを欠損する(δ×β^<-/->)マウスのIECを精査した結果、δ^<-/->マウスではIEC新生/発達分化が遅延するのに対してβ^<-/->やδ×β^<-/->マウスのIEC新生/発達分化は正常マウスと同等であることが判明した。すなわちγδ/αβ-IELによるIECの恒常性維持にはγδ-IELとαβ-IEL間の機能的連結が存在し、β^<-/->マウスのγδ-IEL機能が減弱することが示唆された。すなわち、β^<-/->マウスのIEC新生/発達分化が正常マウスやδ×β^<-/->と同程度であることは、γδ-IELが本来発揮するIECの恒常性を亢進する機能がαβ-IELの存在を必要とすることを提示しており、γδ-IELとαβ-IEL及びIEC三者間における機能的連結の一端を明らかにすることが出来た。
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