研究概要 |
免疫反応の誘導において重要な役割を果たすヘルパーT細胞は細胞性免疫反応を引き起こすTh1と液性抗体産生反応を引き起こすTh2の2つのサブセットに分類される.一般に,BABL/cマウスはC3H/HeNやC57BL/6などの他の系統のマウスと比較して,外来抗原や感染に対してTh2が活性化しやすく,その結果,血清IgE高値や好酸球増加を呈しやすい.しかしながら,BALB/cマウスにおける過度のTh2活性化の機構については不明な点が多い.プロスタグランジンE_2(PGE_2)は免疫抑制効果を有することが知られているが,近年,特にTh1型の免疫反応に対して強い抑制効果を有することが明らかとなっている.我々は,BALB/c,C3H/HeNおよびC57BL/6マウスの脾細胞をStaphylococcus aureus Cowan I(SAC)で刺激した際のIFN-γの産生におけるPGE_2の役割について解析し,以下の結果を得た.(1)脾細胞をin vitroにてインドメサシン(cyclooxygenase(COX)-1およびCOX-2阻害剤)もしくはNS-398(COX-2特異的阻害剤)で前処理しSACにて刺激したところ,C3H/HeNおよびC57BL/6に比してBALB/cマウス脾細胞において高いIFN-γの産生増強が認められた.(2)しかしながら,刺激後のPGE_2の産生量については3マウス系統間で差は認められなかった.(3)脾細胞に既知濃度のPGE_2を添加したところ,BALB/cマウスの脾細胞において高いIFN-γ産生抑制が認められ,この抑制効果は抗原提示細胞のIL-12p70の産生に依存していた.(4)BALB/cマウス脾細胞では,他の系統のマウスよりも多くのPGE_2結合部位が存在しており,この結果よりBALB/cマウスで認められたPGE_2よる高いIFN-γおよびIL-12p70産生抑制効果はPGE_2のレセプターの数の違いによりもたらされることが示唆された.(5)NS-398をin vivoに投与したところ,抗原特異的なIFN-γ産生の増強が認められ,この効果はIL-12投与と同等な効果であった.これらの結果よりPGE_2は抗原提示細胞によるIL-12p70産生を抑制することによりTh1の活性化を抑制していると考えられ,BALB/cマウスにおいて,Th2優位な免疫反応を引き起こすのにPGE_2が重要な役割を果たしていることが明らかになった.
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