研究概要 |
免疫反応の誘導において重要な役割を果たすヘルパーT細胞は細胞性免疫反応を引き起こすTh1と液性抗体産生反応を引き起こすTh2の2つのサブセットに分類される。一般に、BALB/cマウスはC3H/HeNやC57BL/6などの他の系統のマウスと比較して、外来抗原や感染に対してTh2が活性化しやすく、その結果、血清IgE高値や好酸球増加を呈しやすい。しかしながら、BALB/cマウスにおける過度のTh2活性化の機構については不明な点が多い。プロスタグランジンE_2(PGE_2)は免疫抑制効果を有することが知られているが、近年特にTh1型の免疫反応に対して強い抑制効果を有することが明らかとなっている。我々は、この研究でMacrophage-derived chemokine (MDC, CCL22)の産生における、PGE_2の役割を解析し、以下の結果を得た。(1)マウス脾細胞をLPS又は抗-CD40抗体で刺激することにより、MDCの産生が誘導された。MDCの産生細胞は主に樹状細胞とマクロファージであった。(2)IL-4, IL-5を添加するとMDCの産生が増強した。しかし、IFN-γはMDCの産生を抑制した。(3)PGE_2及びCAMPを上昇させる薬剤は、MDCの産生を増強した。IL-4, IL-5とPGE_2の作用は相加的であった。(4)BALB/cマウスではC3H/He, C57BL/6マウスに比べて、PGE_2及びMDCの産生が亢進していた。MDCはTh2細胞を選択的に遊走させることが知られている。従ってBALB/cマウスでは亢進したPGE_2がMDC産生を増強し、Th2細胞の局所への遊走と活性化を促進していると考えられた。
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