CD45は細胞外領域にFibronectin様ドメインと糖鎖に富む領域を持つレセプター型チロシンホスファターゼ(PTP)で、造血系細胞の活性化の制御に深く関与している。しかし、CD45による制御がリガンドの結合によりどのような影響を受けるのかについては不明のままであった。そこで、CD45シグナルを調節している可能性のあるリガンドの検索を目的とした計画を申請した。 この間、CD45の2量体化によりPTP活性の阻害が起こること、その2量体化は細胞外領域の大きいCD45RABCよりは小さいCD45R0でより起こりやすいことなどを示す結果が出始めた。このことは、CD45の酵素活性の調節には必ずしもリガンドとの結合が必要ではないことを示唆するもので、目的論的にリガンドの存在が不確実なものになってきた。また、これまで検索されてきたにもかかわらず、リガンドの候補さえも同定されなかった事実を踏まえて、CD45によるシグナルの制御機構に重点を置いた研究を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)分化段階の異なる2つの細胞株(WEHI-231とBAL-17)では、BCR刺激による増殖制御がCD45により異なる制御を受ける。その機構についてMAPKに焦点を合わせて解析した。その結果、CD45はJNK、p38の活性をWEHI-231ではネガティブに、BAL-17ではポジティブに制御していること、さらにJNKとp38が協調的に働くことがB細胞の運命決定に重要であることが明らかになった。このことは、CD45による異なる制御はJNKとp38を介して行われていることを示唆している。 (2)CD40シグナルはBCR刺激で見られるWEHI-231のアポトーシスを解除するが、BAL-17においては、逆にCD40単独で増殖を抑制する。この抑制はCD45に依存し、JNKとp38が必須であること、しかもCD40によるJNKとp38の活性化をCD45が制御していること、しかしCD40による他のシグナル系(活性化分子の誘導)にはCD45は関与しないことなどが明らかになった。すなわち、CD45はJNK、p38を選択的に制御することによりCD40シグナルによるB細胞の運命を決定していることを示唆している。
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