研究概要 |
1)ホルモン投与による電気生理学的記録の変化 ラット脳の海馬を用いて,ホルモン類似物質の一種トリブチル錫(TBT)の神経伝達機能に及ぼす影響を電気生理学的な手法で実験し検討した。海馬CA1領域の興奮性シナプス後電位(EPSP)を電気生理学的指標として計測した。投与条件ではTBT濃度を5μMとした。30分間EPSPを記録した後、長期増強を誘導し,その後1時間のEPSPを観察した。TBT投与後反応がなくなるまでEPSPを記録する実験も行った。5μM TBTの投与でも,LTPは誘導されたが,増強を維持できないスライスがみられた。また,EPSPの観察では投与30分後から減衰が認められるスライスもあった。これより,TBTによるNon-NMDA受容体の損傷があり、投与30分後からそれが始まることが示唆された。 2)PC12培養細胞を対象とした画像記録手法の確立 PC12培養細胞を用いて,ホルモン類似物質の一種トリブチル錫(TBT)のアポトーシスに及ぼす影響を分子生物学的な手法を応用して画像化し,実験・検討した。PC12培養細胞は培養液中の血清を除くことにより容易にアポトーシスを引き起こす。この影響を,顕微鏡画像で捉える手段として,TUNEL法(TdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling)を採用した。TUNEL法により断片化したDNAを染色によって可視化することが可能となった。得られた蛍光画像は共焦点顕微鏡で撮影した。TBTの濃度を10^<-12>から1g/Lの範囲で培養液に添加し,アポトーシスへの影響を調べたところ,10^<-12>から10^<-3>の範囲で有意にアポトーシスを減少させることが明らかとなった。
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