研究概要 |
昨年度に引き続き,神通川流域カドミウム汚染地域11集落に居住する大正7(1918)年から昭和2(1927)年生まれの女性住民全員147名を対象に,早朝尿中β_2-ミクログロブリン(β_2-M)ほかを測定した。参加者は120名(参加率82%)であった。120名中尿β_2-M値1mg/g creatinineを超えた64例(53%)を対象に,尿細管機能と骨代謝に関する詳細な検索を行った。64例中24例については,1985年にも同様の検索を実施している。 昨年度実施した精密検査において,1985年と2000年の両検査を受検した22例(73〜80歳)について,尿細管リン再吸収率(%TRP),尿細管リン最大再吸収値(TmP/GFR),カルシウム排泄率(FEca)ほかの1985年と2000年の成績を比較し,以下の知見を得た。体重,身長,糸球体濾過値(Ccr)の有意な低下を認めた。尿中に排泄されるCaの割合は減少していた。尿中総タンパク,β_2-M,グルコース排泄および血清Ca, iP値の有意な上昇がみられた。中手骨DIP法による骨量の有意な低下がみられた。4例は骨レントゲン検査所見において骨改変層様の変化を認め,骨軟化症が疑われた。 カドミウム腎症22例の15年にわたる長期観察の結果,イタイイタイ病と考えられる4例を見い出した。4例中3例はCcrの低下が顕著であり,またTmP/GFRも著しく低下しており,腎機能の低下,血清無機リンの減少が骨軟化症発症の主要な病態と考えられた。
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