研究概要 |
申請者等はこれまでの研究でPCR-SSCP法などの手法によって調べたp53遺伝的多型中、特定の配列の変異が肝癌患者では有為に高いことを見いだした。肝癌患者の殆どがHCV感染者であることから、p53の特定の部分の変異とHCV感染との関連性の追求が本研究の目的である。申請者等の研究の場である兵庫県では特定の地域でHCV感染者が異常に多いことが知られている。これまでの研究ではHCV感染者のうちHCV遺伝型の1b型にp53の特定の部分の変異を持つものが多いことを確認し、この変異が感染そのものに影響しているのかあるいは肝障害の発生機序と関連するのかについて研究を進めてきた。本研究では、このp53遺伝的変異と、肝障害、肝癌発生の関わりを詳しく解析し、これら疾患の発生の防御に役立てることを検討することを目的として研究を行い以下に述べるような結果を得た。 C型肝炎ウイルス(HCV)の抗体陽性者の多い地域でHCV-RNA陽性者の肝障害の進行についてヒトがん抑制遺伝子p53のコドン72における遺伝的多型との関連性を解析した。昨年度までの研究結果では〓小板数、AST,ALT,γ-GTP,ZTT、全コレステロール量についてHCV-RNA陽性者が有意に悪い値を示すことがわかっている。ヒトがん抑制遺伝子p53のコドン72における遺伝的多型にはアルギニン/アルギニン、アルギニン/プロリン、プロリン/プロリンの3型があることが知られている。これらの型別に上記各指標、年齢、性別、飲酒量、HCVの遺伝型などについて解所したところ、〓小板数の減少についてプロリン/プロリン型の個体が有意に大きいことを見出した。他の指漂についてはいずれも有意差は認められなかった。〓小板数の減少は肝機能の低下、肝障害の進行を反映していると考えられる。p53の遺伝的多型によるこのような変化はHCV感染後のウイルス増殖、肝障害の進行にp53が関与していることを示すものである。今回の研究結果は遺伝的変異が起こることによりp53の機能が変化し、結果としてHCV感染後のウイルス増殖に有利な状況が発生する可能が考えられる。
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