研究概要 |
肺癌の死亡率はわが国において著明な増加傾向を示し、近年男性では胃癌を抜いて最も高率の癌になっている。肺癌の原因としては男性では喫煙が最も重要であるが、女性では現在なお未解明の点も多い。これまで喫煙による肺癌発生感受性の性差を検討した分子疫学的研究は殆どない。本研究では、biomarkerとして芳香族炭化水素(PAHs)を代謝的に活性化しPAH-DNA付加体生成に関与する第1相薬物代謝酵素である芳香族炭化水素水酸化酵素(aryl hydrocarbon hydroxylase,AHH)活性と、代謝的に活性化されたPAHsの代謝的不活化に関与するグルタチオンS-転移酵素(glutathione S-transferase M1,GSTM1)の遺伝子多型およびPAH-DNA付加体量を測定し、肺癌発生感受性の性差について検討する。 本研究は平成12年度に新規申請した課題であるが、平成12年10月の追加採択であった。研究開始が遅れたため現在までに、九州大学医学部附属病院呼吸器内科にて23名の原発性肺癌患者(喫煙者)についてインフォームドコンセントを得、採血を行った。末梢血を3000rpmで15分間遠心分離し、buffy coatを-80℃で保存している。現在、本研究に必要な遺伝子解析(CYP1A1遺伝子のMspI多型とGSTM1多型)を倫理審査委員会に申請準備中である。症例の収集を行いつつ、許可がおり次第、bugffy coatよりDNAの抽出を行い、上記の多型の解析を行う予定である。また、リンパ球のAHH活性およびAHH誘導性(3-methylcholanthrene誘導AHH活性/非誘導AHH活性)の測定やPAH-DNA付加体量の測定も行う予定である。
|