研究概要 |
人は日常生活において,環境から発がん物質の暴露を受けている。例として,タバコ煙中のジメチルニトロソアミン類やニコチン由来のニトロソアミン類(NNN, NNK)等のメチル化剤による暴露や,食事由来のアミン類と唾液の亜硝酸により胃内で生成されるニトロソアミン類も存在する。これらはDNAの塩基と反応し,N7MedG, O6MedG, N3MedA, O4MeT等のメチル化付加体を生成しDNA変異の原因になると考えられる。メチル化付加体は,修復機構によりGが切り取られ,尿中に排泄されるものがあると考えられる。これらのうち,尿中7メチルグアニン(7MeG)を測定し,環境メチル化剤の曝露(修復)指標としての意義を検討した。 測定方法として,カラムスイッチ-HPLC-ECD(電気化学検出器)法を開発した。尿を5倍希釈し,20μ1をHPLCに注入。前処理カラム:Shim-pack SPC-RP3(4.6x30mm),移動相10mMNaH_2PO_4 0.2ml/min。分析カラム:Shim-pack VP-ODS(4.6x250mm),移動相5%メタノール,10mMNaH_2PO_4 0.8ml/min。検出器ECD:E1 400mv, E2 900mv, G 950mv R 2uA。測定値は,尿中クレアチニンで補正した。 対象者は予備試験として成人男性喫煙者7名。禁煙開始後の随時尿を採取し,禁煙前後での尿中ニコチン代謝物(尿中コチニン)および7MeGを比較した。7MeGは禁煙による低下傾向が見られた。 尿中7MeGは喫煙によるメチル化剤暴露とその修復を示す指標であると考えられる。
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