研究概要 |
糖尿病、高血圧、動脈硬化など、肥満が危険因子となる疾病には一酸化窒素(NO)を介し,たマクロファージの関与が考えられている。一方、脱共役タンパク質2(UCP-2)は、マクロファージなどの免疫系組織での発現が強く、活性酸素の産生を調節することが示唆されている。本研究では、マクロファージのNO産生調節におけるUCP-2の関与を検討した。LPS刺激により、マクロファージでUCP-2のmRNA及びタンパク質の発現量の低下がみられた。UCP-2発現低下の生理的意義を明らかにするために、UCP-2過剰発現細胞株(RAW264ucp2)を樹立した。このRAW264ucp2細胞では、1)LPS刺激による細胞内活性酸素産生量増加の消失、2)NO産生能、誘導型NO合成酵素(NOSII)のタンパク質とmRNAの発現量、及びNOSIIpromoterの転写活性の低下が認められた。UCP-2の転写調節機構をレポーターアッセイにより解析した結果、promoter領域の3'側約200bp領域に高い転写活性を認めたが、LPS刺激によるレポーター遺伝子の発現抑制はみられなかった。一方、promoter領域に加えてUCP-2遺伝子の51側非翻訳領域の配列を挿入したconstructで、LPS刺激後明らかな発現抑制が認められた。さらに、LPSによるUCP-2の発現抑制は2番目のintronを欠損させることで消失した。以上の結果から、LPS刺激によるUCP-2の発現低下は、活性酸素を増加させることでNO産生の情報伝達系の活性化に関与しており、その調節作用は2番目のintron領域に起因していることが示唆された。このUCP-2発現調節機構の存在は、迅速なLPS応答に重要な役割を果たしているものと考えられる。
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