研究概要 |
【目的】14日間にわたる頭部6度下方傾斜での連続臥床終了後、日常生活環境に復帰する際の脱適応と身体不活動について理解を深めるために、連続臥床の前後において重心動揺の変化を調べた。【方法】健常若年男性13名(年齢20±2歳,身長173±3cm,体重67±11kg)を対象に、14日間にわたる6度下方傾斜での連続臥床を行い、その前後において、3台のひずみ測定器(共和電業、DPM711B)とA/Dコンバータ(ADI社、Mac Lab/8s)を用いて、実験前、実験終了後および実験終了の翌日の3時点において、開眼立位での3分間の重心動揺の測定を行った。統計解析には、ANOVAと実験前をコントロールとしたDunett検定を用いた。【結果】3分間の立位測定を完遂できた人の割合は、実験前では100%だったが、実験終了後では70%(13名中9名完遂)であった。しかし、実験終了の翌日には100%にもどった。実験前と比較して、実験終了後、実験終了の翌日ともに、重心動揺の評価指標である1分あたりの重心動揺距離に有意な増加が認められた。【考察】近年、寝たきり老人は、わが国において、120万人以上であると推測されている。わが国には、臥床が健康回復に最善であるとの考え方が浸透しているせいかも知れない。しかし、14日間にわたる連続臥床実験で分かるように、長期連続臥床は生理学的な脱適応と身体不活動による影響を残すと考えられる。その実例として、重心動揺は起床から1日経過すると3分間の立位は完遂できるようになるが、実験終了日、実験終了の翌日ともに、重心動揺の評価指標である1分あたりの重心動揺距離に有意な増加が認められることから、長期臥床による姿勢調節力はすぐには回復しない。そのため、長期臥床から起床したての時期には、特に転倒などの不慮の事故に注意する必要があると考えられる。
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