研究概要 |
慢性萎縮性胃炎や胃がんの原因として知られているヘリコバクター・ピロリ(以下、H.pylori)には、サイトトキシン関連蛋白(以下、CagA蛋白)を有するものと、そうでないものの2種類存在する。本研究は、虚血性心疾患の患者群とコントロール群とを比較することで、患者群とコントロール群との間にH.pylori抗体陽性率の差異が認められるのかどうか、また病原因子として注目されている細胞毒素のCagA蛋白を有する割合に違いがあるのか否かなどを患者対照研究により明らかにすることを目的としている。 秋田県内の医療機関のうち1施設を対象とした。虚血性心疾患(心筋梗塞、不安定狭心症など;以下、IHD)を患者群、検査目的のために来院した外来患者で、冠血管造影に異常が認められない者から無作為に抽出した者をコントロール群とした。初年度は、患者群191人、コントロール群104人であった。H.pyloriのIgG抗体価(Pirika Plate G Helicobacter II assay kit,BIOMERICA,Newport,CA)および抗CagA抗体価(Immunobiological Research Institute,Siena,Italy)は、それぞれELISA法により測定した。両群におけるH.pylori IgG抗体やIHD危険因子等との関係についてStatistical Analysis System(SAS Institute,Cary,NC)を用いてロジスティック回帰分析により行い、p<0.05を有意差ありとした。 主な中間結果(オッズ比OR,95%信頼区間CI)は以下の通りであった:H.pylori IgG抗体(+)CagA(-)[OR;0.84、95%CI;0.431-1.164]、H.pylori IgG抗体(+)CagA(+)[OR;1.02、95%CI;0.554-1.879]、糖尿病既往(+)[OR;2.28、95%CI;1.323-4.217]、高血圧(WHO)または治療歴(+)[OR;2.28、95%CI;1.001-2.893]、HDL-C41mg/dl未満[OR;2.04、95%CI;1.171-3.540]、LDL-C12041mg/dl以上[OR;0.98、95%CI;0.606-1.569]。 次年度も患者群、対照群の症例数をさらに加えることで、H.pylori感染とIHDとの関係の疫学的意義を追究していくこととしている。
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